中心課題は、地球温暖化防止を目指した「気候変動枠組み条約」の締結でした。 「持続可能な開発」として、「開発」と「地球環境保全」を両立させようとする国連の抱える課題の典型的なものです。
気候変動枠組み条約の中に、「二酸化炭素の排出規制を先進国が約束する」という条文を盛り込もうという原案に、当時の米国のブッシュ政権は反対しました。 その理由は、あまりにも経済的ショックが大きいことと、温暖化の科学的予測にまだ大きい不確かさが残されていることでした。
もしも、この科学的予測の不確かさが取るに足らないものでしたら、二酸化炭素の排出規制を約束しようという多くの先進国の意見に対して、間近に迫った選挙を有利に運びたいブッシュ大統領(当時)でも、反対できなかったはずです。 米国のアル・ゴア現副大統領は、著書『地球の徒』の中で、「今後行われる二酸化炭素の排出抑制の交渉において、排出を厳しく削減する案に対し、例外規定を主張するなどして、削減の逃げ道を探す国が出てくるだろう」と心配していますが、この逃げ道の口実として、温暖化予測の不確かさが取り上げられる公算が大きいのです。
日本国内でも、環境税の新設が必至だとの観測が多いのですが、その国会の審議過程で、温暖化予測の不確かさが討議を複雑にする心配があります。 地球サミットに先立って行なわれた米国気象学会の温暖化問題の論争において、全米大気研究センターのウイリアム.ケロッグ前副所長は、「地球温暖化の内容は技術的に複雑なので、1般の市民が充分に理解するのは困難だ」と発言していました。
地球温暖化の理解が容易でないために、地球の将来を心配している若い人々の中には、「専門家は何か隠しているのではないか」との疑いの念を抱く人もいるようですが、地球温暖化の知識はすべて公開されていて、非公開のものは1つもありません。 それにもかかわらず、非公開の部分があるのではないかとの疑念を持たれるのは、気候変動の専門家の説明がいたらなかったからです。
温暖化予測の不確かさはどういう内容なのか、また、この不確かさにもかかわらず、世界の多くの科学者が地球温暖化を懸念しているのはどうしてなのか、このような事情が、少しでも多くの人々に充分に理解されるように心掛けて、この本を執筆しました。 最近の台風.集中豪雨などの激化や暖冬.冷夏の頻発は、目を見張るものがあります。
特に1993年8月の旧盆を迎えても、西日本で、前線活動が梅雨期と同様に非常に活発であり、各地で集中豪雨が発生していることは、真に異常なことです。 この冷たい夏″について、多くの人々が、「地球は異常な事態に陥ったのではないか」といった懸念を抱くのは当然です。

この問題を詳しく述べることが、この本の1つの特色であり、書名を『地球異常』としたゆえんです。 1989年に、私が書いた『気象異常」が同じ集英社から刊行されました。
そのときは、「フロン」、「酸性雨」、「森林破壊」、「温暖化」など地球環境問題全般を取り上げました。 今回は、地球環境問題で最も緊急な重要課題である「地球温暖化」に的を絞ることにしました。
地球環境と温暖化現象です。 二酸化炭素の増加による地球温暖化は、フロンによるオゾン層の破壊、酸性雨、森林破壊などとともに、人間活動が地球環境を破壊するものとして、その抑制.防止が世界的な課題となっています。
酸性雨や森林破壊は地域的なものですが、温暖化やオゾン層の破壊は地球規模の石炭、石油などの化石燃料の消費による地球温暖化は、大気が海洋や生物圏と相互に作用しながら進行しますから、オゾン層破壊というフロンの影響に比べて、単純に理解するのに困難な面があります。 皮膚がんを増加させるオゾン層破壊の元凶とされているフロンは、その主な使用範囲が特定の用途や特殊な工業活動に限られており、また、代替品開発の見通しもついていることに加えて、南極のオゾン.ホールという劇的な現象が確認されたので、フロンの製造禁止は比較的短時日のうちに国際的に賛成されました。
それを盛り込んで、1985年の「ウィーン条約」や1987年の「モントリオール議定書」が締結されています。 この問題は、成層圏オゾン量の変化という単1の現象にかかわるものですから、オゾン量の年々の減少を示す観測データが得られただけでも、問題の厳しさについての1般の認識を深めます。
国連所属の世界気象機関(略称WMO)が、「1992年の成層圏オゾンは、南極だけではなく南北両半球の中高緯度でも減っていて、特に北ヨーロッ.〈からロシア、カナダにかけては例年よりも約12%少なかった」温室効果気体の急増と発表しましたが、この観測データだけでもフロンの製造禁止の正当性について、一般の人々を納得させます。 他方、二酸化炭素の増加は、大気.海洋や生物圏に複雑な形で影響します。
さらに、温暖化の問題については、その主な原因である二酸化炭素の排出規制が、経済活動の抑制に関係して各国の国内事情や南北問題がからんでいるので、国際的に合意することは容易なことではありません。 地球の温暖化をもたらす二酸化炭素は、昔の氷期や間氷期でも変化していました。
約万年地球全体が、火星のように氷の世界にならないで生物の生息できる温和な気候を保っているのは、後で詳しく説明するように、二酸化炭素やメタンなどが、水蒸気とともに温室効果の作用をしているからです。 最近の二酸化炭素などの異常な増加によって、温室効果が過剰に作用することになり、地球の気候が激変することが必至です。

前から始まった最終氷期の間では最低190PPMでしたが、この氷期が約1万5千年前に終わり現在の間氷期となったときには、約280PPMに増えました。 この約90PPMの二酸化炭素の増加は、数千年の間に起きたことでしたが、これに匹敵する増加が、最近のわずか2百年間に起こっているのです。
これが人類の化石燃料の大量消費によるものであることは、疑問の余地がありません。 化石燃料の消費を抑制することは、経済発展を目指す国にとって大きい問題です。
国際社会が一致して、二酸化炭素の排出規制をしなければ、大気中の二酸化炭素が今後さらに加速度的に急増することは避けられません。 このまま二酸化炭素の増加を放置しておくと、21世紀の間に大気中の二酸化炭素は倍増して、地球全体の平均気温は現在よりも約2℃上昇するものと予測されています。
米国の海洋大気庁の真鍋淑郎博士らの研究は、約7℃の昇温が5百年後に起こるという結果を得ていまこれらは、数千年の長い時間をかけて起こった氷期から間氷期への変遷と同程度の変化が、わずか数年の間に起こるだけではなく、温暖化にともなう異常気象が激化する心配が大きいので、このような環境激変のために、国際社会は大混乱に陥ると懸念されているのです。 メタンなどの温暖化促進作用二酸化炭素の増加が引き起こしている地球環境の激変を促進しているのが、大気中に含まれているメタンやフロンなのです。
これらの気体は、後で詳しく述べるように遠赤外線を吸収しますので、二酸化炭素と同様に地球を温暖化するように作用します。 メタンは、沼、湿地や水田から出ている気体で、火をつけると青い炎を出して燃えます。

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